英語ミニコラム

英語や英文に関するエッセイ『知ったかブリッコ』の2003年版。

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フィンガー5

2003/12/1

“How many fingers do you have?”と訊かれたら、何と答えますか。

「そりゃあ10本に決まってら」「足の指も加えて20本よ」

実は大多数の人が持つfingerの数は8なのです。
足の指はtoeだし、手の親指はthumbであって、fingerから除外されます。

親指を別扱いすることにはメリットもありましょうが、矛盾を含むと感じます。
ミトンではない手袋をfive-finger gloveというのは差し支えないし、5本指を前提とした言い回しもいくつかあります。中指をmiddle fingerと呼ぶのは、4本指ではちょっとヘン。

一方、足の爪先には指しかないので、ひっくるめてtoeという表現もうなずけます。手と違って1本1本の指にさしたる名前もないのは、靴文化のせいでしょうか。

ところで世の中には足の指に異常な愛着を見せる人々がいるらしいのですが、『人形の足の指が好きで好きでたまらない人』の存在には、ただただビックリです。足の指を持つ人形ってレアなので(あっても溝程度)、彼らは満たされない思いを抱いているのでした。

アイリッシュな話

2003/11/1

日本人にとって、イギリス人とアイルランド人は同胞に見えますが、ひょっとしてイギリス人はアイルランドを異世界とでも感じているんじゃないでしょうか。

英語から窺い知れる、へんなアイルランドとは・・・。

アイルランドではジャガイモしか穫れない?
アイリッシュりんご、アイリッシュあんず、アイリッシュすもも、アイリッシュぶどう・・・みーんなジャガイモのこと。もちろんアイリッシュポテトも。

無風で凪いだ状態はアイリッシュ嵐で、小さな艀(はしけ)はアイリッシュ軍艦。
アイリッシュ橋は水の中にあるのだとか。

アイリッシュ昇給を告げられて喜ぶと賃下げのことだし、アイリッシュ紙吹雪となめてかかると煉瓦が飛んでくる。アイリッシュ歯痛は妊娠で、アイリッシュ接吻は平手打ち。

そもそもIrishには「わけわからん」という意味があるので、この調子でいろいろでっち上げちゃいましょう。
アイリッシュミスト=虹、アイリッシュウィスキー=青汁、アイリッシュマン=縄文土器、アイリッシュツイード=コーネル・ウールリッチ・・・。

黄色い感覚

2003/10/1

フランス人シムノンに『黄色い犬』という推理小説があります。そんな毛色の犬が存在するのかと訝りたくなりますが、別に珍しい種類ではなく、「黄色」という単語は広範に薄茶あたりまで指すのだとか。

英国人ファージョンは童話『レモン色の子犬』を書きました。あの、まっきっきのレモンと同じ色の犬が・・・。

どうやら言葉の問題ではなく、欧米人と日本人では色彩感覚が微妙に違っているようです。
「太陽は黄色」が世界的相場だそうですが、日の丸ニッポンの子供たちは、お日様を真っ赤に塗るようしつけられてきました。

英語のyellowには、「卑怯」「臆病」「低俗」「ねたみ」など、ろくな意味がなく、花言葉も黄色い花には良いイメージのものが少ないのです。
「黄色人種」としては、悪感情を持たれているようで、面白くないところです。

どこの人?

2003/9/1

地名につけてその土地の人を表す接尾語がいくつかあります。
アメリカの人はアメリカン(-an)。
ジャパンの人はジャパニーズ(-ese)。
東京都民はTokyoite(-ite)。

Germanyの人がGermanって、日本人にはわかりにくくて、イラク人がIraqi というのも不思議。

Hakodatenneは函館の女(ひと)・・・パリジェンヌを真似て。
佐賀県人はSaganmon(地元ネタ)。

ところで、-an、-ianを人名につけると、「・・信奉者」「・・研究者」になります。
Holmesianはシャーロッキアンのことですが、ほとんど見かけませんね。

バーナード・ショー崇拝者は本来Shawianのはずですが、本人がそれを嫌がって無理やりShavianと呼ばせたそうです。そういうわがままを通せるとは、さすがの文学者。

『社会の窓』

2003/8/1

とは、昭和20年代に人気を博したラジオ番組だそうです。
なぜズボンの前あきを指すようになったか知りませんが、言いにくいことをユーモラスに表せるので広まったのでしょう。

それを英語でなんと呼ぶのかわからなくて、『パンツの作り方』のページを書くとき困りました。「私はこの開口部の名称を知らないので」と断り書きをつけて、日本語で表記していたところ、親切なアメリカ人が「flyだよ」と教えてくれました。Thanks, Doug.

では「社会の窓があいてますよ」って、どう言うのでしょう。
"Your fly is undone." ストレートな表現。
"You're flying low." 低空飛行?!
"Your shopdoor is open." 社会の窓と共通感覚かも。
"The metal's showing!" メダルじゃないのよ?
"XYZ" なかなかスマートですね。"Examine your zipper" の略で「エクスワイズィー」と読みます。

こんなにいろいろあるなんて、あけっぱなしで歩いてる人が多いんでしょうか。

付記:
その後、"Feel a breeze." をめっけ。詩的ダナア?

女心を男が歌う

2003/7/1

私事ですが、私は英国のミュージシャン、Kevin Ayersの熱烈なファンでした。
ケヴィン当人はマレーネ・ディートリッヒの熱烈なファンで、マレーネに捧げる曲を作ったり、ディートリヒのヒット曲『Falling in love again(また恋に落ちて)』を歌ったりしています。

その歌詞の一部です。
Men cluster to me like moths around a flame.
And if their wings burn, I know I'm not to blame.
男たちは炎に集まる蛾みたいに寄ってくるけど、火傷したって知ったこっちゃないわ。

男ケヴィンのリリックカードでは、こうなってます。
Girls flutter to me like moths around a flame.
(flutterは睫毛をパチパチさせて誘惑する色っぽいしぐさです。)

英語などでは、違う性でカバーバージョンを出す場合、歌詞を変えるのですね。そういえば王と女王の御代で国歌も違います。

翻って日本では演歌でもポップスでも、そのようなケースは稀です。カバーに限らずオリジナルからして、男性が女性の立場で熱唱することが珍しくなく(またその逆もチラホラ)、別に違和感を覚えません。
小手先でいじるだけでは済まない言語の特質と奥深い背景があるとはいえ、外国人の目には「異様な文化」と映るかも・・・。

One sheep, two sheep, ... zzz

2003/6/1

眠れないときに羊を数えることを、count sheep といいます。

でも、なぜ、羊?
sheepはsleepに似ている。単複同型なので数えやすい。
うーん、やっぱり羊の穏和な容貌、とりわけいかにも眠気を誘うようなあの目が効くのでしょう。

ところで、グレタ・ガルボ、マルレーネ・ディートリッヒ、マリリン・モンロー・・・色っぽい人たちはみーんな眠そうな眼差しをしていますね。
そのせいかあらぬか、sheep's eyes は『流し目』を意味します。

今宵からは、若きディートリヒが美脚を振り上げて柵を飛び越える情景をイメージして、ディートリヒがひとり、ディートリヒがふたり・・・に変えましょう。
とても眠るどころじゃないって?

五月雑感

2003/5/2

五月病は日本独特の社会環境が生み出したもので、外国では見かけないようです。初夏の精神不安定をJuneと呼ぶことがありますが、爽やかな5月は輝く美と若さの象徴です。
5月の朝露を顔に塗って美人になった女性は、お金持ちの年寄りをめっけて、May-December marriageを狙いましょう。

その昔、日本の某音楽雑誌のスタッフが英国のギタリストBrian May氏を訪問したら、カラフルな5本指の靴下を履いていました。それが欲しいとねだると、気前の良いブライアンはすぐさま脱いで手渡してくれたそうです。スタッフはその「ほかほかソックス」を大事に持ち帰り、読者プレゼントの景品にしたとか。(何が5月?)

鼻長々

2003/4/1

『もしクレオパトラの鼻が低かったら世界は違っていただろう』とは、パスカルの有名な警句です。高い鼻って、世界的に美醜の決定的要因なのでしょうか。

英文はこうです。
If Cleopatra's nose had been shorter, the whole face of the earth would have changed.

「低い」はshortなのか。ならば「高い鼻」はlong nose ・・・ うーむ、なんだか魔女の鼻を連想してしまいそう。

鼻ペチャ日本人は単に高い鼻に憧れますが、高い鼻が当たり前であるあちらの人々は、鼻筋が通ってほっそりと形の良い鼻を理想とし、その誉め言葉が“long nose”らしいのです。

では、high noseは間違い?
ちゃんとありますよ。high-nosed =鼻高々。これは日本語と同じ意味ですね。

不名誉な日本製英語

2003/3/2

日本には外来語が氾濫していますが、外来語として英語圏に定着した日本語もたくさんあるようです。
たいていは日本の良き文化や伝統工芸品を表していますが、中には恥ずかしいものも・・・。

karoshi(過労死)はその筆頭でしょうか。
banzai(万歳)もろくな意味ではありません。
skibbyはスケベからの派生語で売春婦を指します。似た意味のmooseは現在ほとんど使われておりませんが、「娘」が語源です。
テレビゲームのやりすぎで起こる発作をNintendo epilepsyというそうです。
日本語から翻訳されたものでは、black mist(黒い霧=政治腐敗)、comfort woman(慰安婦)など。
そして、ナニコレ? rin-no-tam ・・・日本の特産品だと思われたらどうしよう。

Tom, Dick, and Harry = 『張三李四』

2003/1/26

ヘンな意味を併せ持つ人名について、掲示板で話題にしたことがありますが、英語の人名は、俗語でひどい意味に使われることがしばしばあります。
TomやHarryもそうだし、Dickに至っては超カワイソ(ここではとても言えません)。

本人たちがそれを気にしないのは、英語圏では人名単語の数が少なくて、誰の名前もありふれているからでしょう。

狭い選択肢の中から、親たちは子供の未来に夢を託し、命名に心を砕いているものです。5月生まれはMay、クリスマス前後ならHollyなどは単純としても、それぞれの名前には、由緒正しい語源があります。

エミリーはプレイガール

2003/1/11

──とは、まるで60年代アメリカの学園コメディドラマみたいなタイトルですが、これはあのプログレッシヴ・ロックバンド、ピンク・フロイドのデビューシングル(原題 See Emily Play)。レコード会社も知恵を絞ったんですよ、きっと。

古き良き時代のアメリカTVドラマやアニメにはたいそう楽しいものが多く、年輩のかたには懐かしいでしょう。
その原題を一部紹介します。概して英語の題はシンプルで奥深く、日本語は受け狙いのような・・・。






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